独身３７歳男性がこの週末を振り返りたい

２２：００　仕事が終わった。職場の仲良くもない男連中と飲みにいく。
酒は嫌いじゃないが、ここ数年内臓がベストコンディションって日がない。
わざと、汚らしい店に行く。チューハイは舌がしびれる（グルメ的な意味ではなく）ので
ビールをちびちび飲む。揚げ物や鍋など思い切った物を頼まずにダラダラ時間だけが過ぎて終わる。
いつのまにか増えた後輩が勝手に楽しんでいる様を見て楽しむ。
時々喋るとみんな聞いてくれるが、明らかに気を使わせてしまっていることを感じる。

２４：００　終電で帰る家庭持ちの奴らを見送り、根無し草の自分は二軒目へ。
１軒目もおごったので、次もおごることになるだろう。
ただし、分母が減ったので負担は大きい。しかし、このまま帰る寂しさに勝てない、
２軒目は女の子のいる店へ。

俺起きる（嫁は睡眠中）
↓
俺仕事（嫁は遊びと趣味にでかける）
↓
俺帰宅（嫁は睡眠中）
↓
俺１人でご飯（嫁は睡眠中）
↓
俺１人で寝る（嫁は睡眠中）
↓
･･･無限ループ

うん･･･独身と変わらないんだがｗｗｗ

２４：２０　女の子がいて、安く酒が飲めて、時間がつぶれる店にすっかり詳しくなった。
東欧系の女の子（おばさん）のいる店に。
ルーマニア女がカタコトの日本語でサービスしてくれる店だ。
２０代の若い男らはむしろ喜んでいる。
彼らの喜びは、秘境探検に近い喜びだ。
しかし、自分にとってはそうではない。
きっと、若い彼らは明日の土曜日、本命の若く美しい日本人の彼女に
「きのう、先輩にとんでもない店つれてかれってさあ、、、」とでも笑うのだろう。
俺はここに、最後の最後の女性との対等な関係を求めて来ているというのに。

２５：００
これでも、大学生のころは友人とカラオケボックスも行ったことがある。
カラオケで大騒ぎして、朝日を浴びて帰ったこともある。何度も。
しかし、今はルーマニア人の腰に手を回して適当なラブソングを歌って、
後輩にうわべだけの口笛をもらって酒の力でいい気になる。
会計は４万弱だった。「チーーッス！」の声と引き換えに一括払い。
マイルがたまったからまあいいや。
後輩たちはこのあと朝まで飲みにいくみたい。
さて、おれはどうしようか。

２５：３０
若いころなら、漫画喫茶で徹夜で漫画を！と思えたけど
もうそんな年じゃない。「寝たい」だけど、ビジネスホテルに泊まるのも戸惑う。
だったら、さっきあんなに散財しなきゃよかったのにね。
歩いて帰ろうかな。アパートまで８ｋｍ。
ふらふらでも３時間でつくだろう。

26:00

いろいろなことを考える。
学生時代、結婚なんて考えてなかった。
彼女がいた。でも、結婚はまだまだ先だと思ってた。
その彼女と別れた。すぐ新しい彼女ができた。
結婚なんて考えてなかった。
その繰り返し、今思えば、それが何周かできたことが奇跡だったんだ。
いつの間にか、結婚をしない理由を探すようになった。
誰にも結婚しろなんていわれてないのに。
自分が、今結婚していたらどうだろう。
仕事が遅くてもいい、
夜、飲みに行ってもいい、内緒で女の子のいる店に行ってもいい、
だけど、こうして夜中一人で寒空を歩いているだろうか。
一刻も早く家族に会いたくて、タクシーに乗っているのではないか。
いま俺は、誰も待っていないアパートに焦ってタクシーで帰りたくはない。

４：００
途中で、街道沿いの松屋に寄った。
牛めし並を自然と押す。つい数時間前に４万近く使ったのに。
しかし、一人で定食食ったってちっともうれしくない。
一人で２００円無駄遣いするより、
後輩数人に数万おごってあげたい。
こういえば豪快だが、ただ寂しいだけなのだ。
寂しさを解消してくれるわけでもないのに。
驚いたことがある。暖かい味噌汁を飲んだら、もうなにも喉を通らないのだ。
むりやり数口牛めしを吸い込んで、
半分より少し少ないくらい残して去る。
家までもう少しだ。

５：００

家に着く直前の１００円ローソンでタカラ焼酎ハイボールの５００缶を６缶買ってしまう。
明日、なにか自分が希望に満ちた日をすごすとは思えないのだ。
だから、明日の自分のために酒を買っておく。
好きな酒とか、美味い酒とか、そういうものはない。
だから、安くて酔える酒でいい。
カップ麺だけはちょっと高くて美味そうなものを買う。

５：３０

家に着く。
家が落ち着く、なんて思えたのはいつまでだろう。
入社直前に借りたアパート、安くて駅が近いが１階が宴会ができるほど広い居酒屋。
この時間に帰ると、必ず家の前には大学生の吐いたゲロがある。
以前、金曜の夜を寝てすごしたら
大学生の飲み会の嬌声が一晩中聞こえてきて、その声が自分を切り裂くようで
とても耐えられなかった。家は落ち着かない。
ゲロを見た朝は、ああもうあの嬌声を聞かなくていいんだと安心する。
ＩＫＥＡで買ったソファに座って、テレビの電源をつける。

１１：００

チャンネルを変えた覚えはない。
ソファの上で、着替えもしないで
見たかったわけじゃないテレビを見ながら、缶チューハイ６缶を飲み干してしまった。
そんなに酔ってる感じもしない。
ほっぺたをゆっくりひっぱられている感じがする。
午前中だけど、今日はもうなにもできないという確信がある。
窓の外は雲ひとつない晴天なのに。
テレビの横にたて掛けてある、去年買ったロードバイクが恨めしそうにこっちを見る。

腹が減った。
外に出よう。なんでも、食べたいものがあったら食べようと思う。
自分が食べたいものを思う存食べようと思う。
スウェットパンツを履いて、ダウンを着て立てばかなり酔ってる事にき気付く。
ラーメン屋、台湾料理屋、カレー屋、牛丼屋、焼肉屋、思いつくままに
店を回るが、なんでだろうか、どの店にも入れない。
薬局で冷凍食品のから揚げとチャーハンを買って、
アパートでから揚げチャーハンを作って食べる。
酒が足りないと思う。

１５：００
食ったら寝た。
ウトウトしてたら時間が過ぎた。
眠りに入る瞬間はいつもゾッとする。
説明しようがないけど、ゾッとしながら眠って、嫌な夢を見る。
おきる瞬間もゾッとする。ゼエゼエ息をするくらい焦ってる。
時計見ると１０分も経ってない。
独身は気楽でいいな、とか
金があっていい、とか、趣味に時間が使えていいな、とか言う奴はいるけど
このたったの１０分で、もう何もかも嫌になって、
自分の人生を否定できることが何度も何度もある。
この地獄の１０分を知らないから、みんな好き勝手なことが言える。

１５：３０
どうしようか、
一人で夜をすごせるのか、無理だ。
誰かを誘おう。
同級生にメールをする。
みんな子持ちだ、当然無理だ。「また今度な」と返信。「今度」がくるわけない。
子供や嫁さんより、この独身３７歳のオッサンを優先する日が来るわけがない。
友情や思い出も関係ない。みんな今を生きているんだ。
しかたないから、独身の後輩へメールをする。
一人捕まった。ようやく外出の準備をする。

やめて(´；ω；`)